がん領域で、DNA損傷応答(DDR)経路を標的とした化合物を開発する企業。合成致死を含むDDRパスウェイの新規標的分子の探索、細胞パネルのスクリーニングによる腫瘍細胞への特異性の確認、バイオマーカーによる患者層別化などの工夫を行い、パイプラインを構築。リード品のART0380はATR阻害剤で、DNA損傷応答のシグナルの起点となるATRによるChk1の活性化を阻害する。その他に、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ) DNA二本鎖切断修復に関与するPolθの阻害剤や、新規のDDR関連ヌクレアーゼの阻害剤の品目を保有している。またアライアンスでは、Merck KGaAとDDRヌクレアーゼを標的とした新薬開発、Novartisと放射性リガンドの標的探索の研究提携を行っている。
Cambridge, Cambridgeshire, United Kingdom
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設立 2016 年 | 推定従業員数 51-200 名 | 累計調達額 $298.3M Ave:150.6M Med:20.2M | 提携企業数 3件 Ave:3.4 Med:1 | 論文数 17件 Ave: 12.8 Med: 3 | 特許数 27件 Ave: 12.8 Med: 4 |

DNA損傷応答(DDR)経路に関連する合成致死、テロメラーゼ非依存性テロメア伸長(ALT)、プラチナ/PARP阻害剤などの薬剤耐性などを対象に研究を行っており、その手法として独自のレポーターアッセイを新規標的探索や薬剤探索に使用していることが伺える。
ALTはDDRを介するテロメア延長で、10〜15%の癌の生存メカニズムに関わっているとされることから標的メカニズムとして取り上げている。
レポーターアッセイについては、申請特許や、複数の論文が報告されている。
2024年の論文では、DNA二本鎖切断修復(DSBR)をタイプ別に定量評価することができるアッセイを発表している。
相同組換え (HR)、古典的な非相同末端結合 (cNHEJ)、マイクロホモロジー介在末端結合 (MMEJ)、および一本鎖アニーリング (SSA) の4つのタイプ別に作られたレポーターで調べることができ、目的のタイプの修復が起こるとNanoLucレポーター遺伝子の正常なORFが構成され、発現が起こるようにコンストラクトをデザインしている。
この手法は化合物の探索に使われており、Polθポリメラーゼ阻害薬のヒットを探索し、MMEJ経路を特異的に阻害できるかどうかを評価している(Figure 6)。
また、新規標的探索の面でも使用できる可能性があるとしており、この手法をNHEJ経路を働かなくさせたPRKDCノックアウト細胞モデルに適用した例(Figure S5)を示していることから、例えば特定の修復経路を阻害したノックアウト細胞系で、代替的な修復経路を阻害し合成致死を誘導できるかを評価することで標的を探索するアプローチが考えられる。
この論文のレポーターアッセイ手法についてはJoVEでも詳しく紹介されている。
また別の事例で、ArtiosのSABであるSimon J. Boulton氏が共著者の論文によると、CRISPRスクリーニングを使ったDDR標的探索(Fig.1)と、そこで見つかったAPE2ヌクレアーゼとMMEJの関係を、レポーターアッセイにより評価している(Fig.3)。
パイプライン名 | 開発フェーズ | 対象疾患 | 標的分子/作用機序 | モダリティ | パートナー企業 |
|---|---|---|---|---|---|
ART0380 | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Endometrial Cancer | ATR inhibitor | 低分子化合物 | |
ART0380+Irinotecan | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Solid Tumors | ATR inhibitor, Irinotecan | 低分子化合物 | |
ART0380+gemcitabine | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Ovarian Cancer | ATR inhibitor, gemcitabine | 低分子化合物 | |
ART6043 | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Solid Tumors | Polθ inhibitor | 低分子化合物 | |
ART6043+PARP inhibitor | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Solid Tumors | Polθ inhibitor, PARP inhibitor | 低分子化合物 | |
ART6043+RLT | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Solid Tumors | Polθ inhibitor, RLT | 低分子化合物 | |
Undisclosed | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Oncology | Novel DDR target | 不明 | Merck & Co. (MSD) |
Undisclosed | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Oncology | Telomere replicant stress | 不明 | Novartis |
提携企業 | 日付 | プレスリリース |
|---|---|---|
Novartis | 2021-04-07 | |
Merck KGaA | 2020-12-03 | |
ShangPharma | 2019-11-06 |
CRISPR screeningによる合成致死標的分子の探索を行う企業。sgRNAライブラリと特定の薬剤をがん細胞株に作用させ合成致死標的遺伝子を特定する通常のアプローチに加えて、CD8+ T細胞との共培養の有り/無しの条件でsgRNA量の差分を取って腫瘍免疫的な合成致死に至った標的遺伝子の特定や、同様のアプローチでのマクロファージとの共培養によるアッセイなど、免疫細胞との共培養CRISPR screeningを行う。さらに、sgRNAライブラリを導入したがん細胞集団を正常マウスと免疫不全マウス、免疫不全マウス+PD-1抗体投与の条件でそれぞれ移植し、合成致死ではなく腫瘍細胞が免疫回避を行うような遺伝子摂動を特定するIn vivo CRISPR screeningの事例を報告している。リード品の品目はMTAP-deletionがん患者を対象としたPRMT5阻害剤の品目で、現在Phase 1/2段階にありFDAのFast Track指定を受けている。その他に、後続品のPRMT5阻害剤の品目(TNG462)や、CoREST deacetylase複合体阻害剤のTNG260などの品目などを保有している。