AtlasVenture(VC)の主導で設立された創薬ベンチャー。RNAプロセッシングを調節する低分子化合物を開発する。技術の詳細は開示されていないが、pre-mRNAに結合することでpre-mRNAのスプライシングを調節する化合物をスクリーニングする技術を持ち、癌のドライバーとなる転写因子の発現調節や、gene fusion因子の発現調節、神経毒性を示す因子の発現調節を行うパイプラインを保有している。リード品のREM-422はMYB転写因子のpre-mRNAに結合し、ナンセンス変異を持つExonを含めるようにスプライシングを調節することでMYB mRNAの分解を誘導するMYB pre-mRNA標的化合物で、腺様嚢胞がん(ACC)を対象にPhase 1段階にある。
Cambridge, Massachusetts, United States
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設立 2019 年 | 推定従業員数 51-200 名 | 累計調達額 $211M Ave:130M Med:18.5M | 提携企業数 4件 Ave:3.2 Med:1 | 論文数 10件 Ave: 13.3 Med: 4 | 特許数 33件 Ave: 13.2 Med: 4 |
標的mRNAのスプライシングを特異的に調節するRNA結合低分子化合物を探索し、標的mRNAのalternative splicingを誘導することで標的発現を抑制する創薬アプローチを取っている。
多数の特許を申請しており(例:2023年申請特許)、多くの特許がpre-mRNAのsplicingを調節する化合物として申請されている。 特許では様々な化合物構造や対象疾患が列挙されているため技術や品目の詳細は判読できないが、特許文章の中で「核酸のバルジ構造を形成or安定化or減少させる」「スプライソソームの構成分子を標的pre-mRNAの化合物結合箇所に動員する」といった記載があるため、化合物結合箇所付近で標的pre-mRNAのスプライシングを誘導する作用機序であると推察される。
Websiteの説明と動画から、以下の3つの要素技術を保有している事が伺える。 1.Target Validation : 標的分子のタンパク質発現を変調させるために、標的mRNAのどのExonを標的とすべきかを検証する技術。トランスクリプトームデータベースの機械学習分析によって、alternative splicingの誘導によって特定のExonを挿入/除去することで、標的mRNAの分解(おそらくナンセンス変異を含むmRNAのNMD品質管理機構による分解)が起こるようなExonを特定する。詳細を示すような論文や特許情報は確認できなかった。
2.High-Throughput Screening : In vitroで標的pre-mRNAに様々な化合物を作用させ、スプライシングを調節する化合物を特定する技術。紹介動画ではREMseq技術と呼ばれており、多数のRNA配列と多数の化合物を一度の試験で並列に評価することができる。後述するnatural sequence RNA bind-n-seq (nsRBNS)技術が関連している可能性がある。
3.Multiplexed cell-based screening : 細胞アッセイ系で、多重化された評価を行うことができる技術。詳細を示すような論文や特許情報は確認できなかったが、この試験によって候補化合物が選択的に標的分子のmRNA発現を特異的に変調させるかどうかを評価できると思われる。
RNA結合タンパク質(RBP)が様々なRNA配列の中でどの配列に優先的に結合するかを評価する技術。
Remix Therapeutics社の社員は共著者の1人としてのみ参加している文献のため、Remix社の技術では無い可能性もある。 2024年のpreprintが該当し、RBPのRNA結合配列を特定するiCLIPアッセイ(RBP-RNA結合箇所をUV架橋し、RBP-RNA複合体を免疫沈降で濃縮し配列を特定するアッセイ)を応用し、多数のRNA配列に対して単一試験での評価を可能にしている。
ポイントは、結合モチーフ配列や類似配列を含む均一長のオリゴDNAをアレイ上で合成し、In vitro転写によってRNAプールを作成。このRNAプールに対してRBPを反応させ、結合したRNA群をシーケンスで特定することで、検出頻度の高い配列を評価できる点にある(Fig.1B)。 preprintでは神経発生などに関与するUnkempt(UNK) RBPについて、ヒトUNKとマウスUNKのRNA結合モチーフの差について分析を行っている。
あくまで推察となるが、原理的にはpre-mRNAとsnRNA/スプライソソームの相互作用の多重化検出にも応用することができると思われる。また、その際に化合物を作用させれば、化合物作用有り/無しの条件でRNA-スプライソソームの相互作用の変化を検出できると思われる。
腺様嚢胞がん(ACC)、およびAMLを対象に開発されているリードパイプライン。
経口投与される低分子化合物で、2023年の学会発表でAMLマウスモデルに対する抗腫瘍効果と標的mRNAの発現を抑制したデータを紹介している。
この学会発表で、化合物の作用機序と創薬の流れについて簡単に触れられていた。標的分子であるMYBは転写因子であり、ナンセンス変異を含むが通常は使用されない"poison exon (PE)"をpre-mRNAに持つことが分かっている。
ここで、REM-422化合物は、U1 snRNP spliceosome複合体をPEの5'スプライスサイトに結合させるように働くことで、MYBがPEを含むスプライシングを起こし、結果としてMYB mRNAが分解される仕組みで作用すると説明している。
他のパイプラインとしてfusion geneや神経毒性タンパク質を標的とした品目を保有するが、同様のアプローチを取っているのであれば、標的遺伝子のpre-mRNAのナンセンス変異を含むpoison exonの5'スプライスサイトとspliceosomeの相互作用を促進するような化合物を探索していると推察される。
パイプライン名 | 開発フェーズ | 対象疾患 | 標的分子/作用機序 | モダリティ | パートナー企業 |
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REM-422 | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Acute Myeloid Leukaemia (AML),Adenoid Cystic Carcinoma (ACC) | MYB | 低分子化合物 | |
FUSION DRIVER | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Oncology | 不明 | 低分子化合物 | |
TOXIC PROTEIN AGGREGATE MODIFIER | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Neurodegenerative disorders | 不明 | 低分子化合物 | |
Genetic Driver | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Oncology | 不明 | 低分子化合物 | |
ADDITIONAL TARGETS | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | 不明 | 不明 | 低分子化合物 | |
J&J COLLABORATION | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Oncology | 不明 | 低分子化合物 | Johnson & Johnson |
ROCHE COLLABORATION | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | 不明 | 不明 | 低分子化合物 | Roche |
提携企業 | 日付 | プレスリリース |
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Tempus | 2024-07-30 | |
Roche | 2024-07-10 | |
Roche | 2024-01-03 | |
Janssen Pharma | 2022-02-17 |
Rocheより販売されている、脊髄性筋萎縮症(SMA)を対象としたRNAスプライシング調節低分子薬(Evrysdi)を開発した企業。また、ナンセンス変異のリードスルーを誘導するデュシェンヌ型筋ジストロフィーの承認薬(Translarna)を保有する。pre-mRNAスプライシングに関するバイオロジーの知見が多く、RNA-seqやバイオインフォマティクスの技術とRNA標的化合物ライブラリーを組み合わせ、疾患特異的なAltenative splicingを調節する低分子化合物の探索を行っている。