薬剤耐性がんを対象として、T-cell engagerとなるbi-specific抗体医薬品(BiTE抗体)の開発を行う企業。共有結合性の阻害剤(covalent drug)とBiTE抗体を組み合わせるアプローチに特徴があり(HapImmune Platform)、EGFRやRASを標的としたcovalent drugを投与すると、薬剤が標的分子に結合し、標的分子がプロテアソームで分解され、薬剤-標的タンパク質由来ペプチドの複合体としてMHCに提示される(pMHC)現象に着目。この提示されたpMHC抗原を認識し(=ハプテン抗体)、加えてCD3などのT細胞抗原に結合するbi-specific抗体を用いることで、薬剤が作用した腫瘍細胞を選択的に殺傷する仕組みで作用する。これによって、分子標的薬の効果持続性の課題を解決することを狙う。なお、bi-specific抗体のフォーマットは、論文ではscFvフォーマットを2種連結したDiabodyのフォーマットを使用している。
New York, New York, United States
この企業の詳細情報の作成をご希望の方は、お気軽にリクエストください
設立 2022 年 | 推定従業員数 11-50 名 | 累計調達額 $30M Ave:130M Med:18.5M | 提携企業数 1件 Ave:3.2 Med:1 | 論文数 1件 Ave: 13.3 Med: 4 | 特許数 0件 Ave: 13.2 Med: 4 |
RASなどに対する共有結合性阻害剤を作用させたときに、RAS-drug複合体がプロテアソームでプロセッシングを受け、MHCに提示される現象に着目。
このpMHCとして提示された抗原に対する抗体(低分子が結合しているため、Ras-drug複合体に対するハプテン抗体と言える)を作成し、T-cell engagerのBiTE抗体のフォーマットにして作用させるアプローチ。
2023年の論文で、KRASG12C、もしくはEGFRに結合する共有結合性性阻害剤を使用し(sotorasib, osimertinib)、KRASG12C-drug複合体由来のpMHC抗原に結合するハプテン抗体を取得し、BiTE抗体を作成した事例を報告している。
ハプテン抗体取得の流れは、まず使用する薬剤が結合する標的タンパク質の領域を分析し、その結合領域の中で特定のHLA(A*02, A*03,11など)に提示されるペプチド配列を特定する。
次に、特定したペプチド配列と薬剤の複合体、およびpMHC-ペプチド薬剤複合体を作成し、これを抗原としてファージディスプレイスクリーニングを行い、抗体のスクリーニングを実施。親和性成熟の工程を経て、MHC非存在下では結合せず、かつ複数のHLA型を認識するpMHC-ペプチド薬剤複合体に結合する抗体を取得している(Fig.1,2)。
その後、がん細胞株とT細胞の共培養系などの細胞アッセイ系で薬効を評価している。
興味深い点として、論文ではKRASG12CなどのKRAS阻害活性を示す共有結合性阻害剤を使用していたが、BiTE抗体の作用メカニズムを考えると、標的タンパク質の活性を阻害しない共有結合性阻害剤であってもハプテン抗体を作成できると考えられる。
2024年にはRevolution Medicine社と提携し、同社のRAS(ON)共有結合性阻害剤と併用するハプテン抗体の探索を行うことを発表している。
パイプライン名 | 開発フェーズ | 対象疾患 | 標的分子/作用機序 | モダリティ | パートナー企業 |
---|---|---|---|---|---|
RAS(ON) inhibitor Hapten Ab | 探索 非臨床 P1 P2 P3 申請 上市 | Oncology | RAS-covalent drug complex targeting Hapten Ab based T cell engager | 抗体医薬 | Revolution Medicines |
提携企業 | 日付 | プレスリリース |
---|---|---|
Revolution Medicines | 2024-04-04 |
KRAS G12C, G12D変異を標的とした阻害剤や、Selective RTK、PRMT5、SOS1阻害剤などを開発する企業。自社の品目を複数組み合わせる併用療法で、RAS/MAPKシグナルを複合的に阻害するアプローチを取る。その上で、追加で発生する耐性変異に先んじて対応するため、RAS/MAPKシグナル阻害を行う2種類の薬剤を作用させた条件下でのCRISPR screeningを実施し(Drug-anchored CRISPR screening)、耐性候補遺伝子や合成致死標的を特定することで有望な追加併用薬剤の候補を特定している。KRAS G12C変異を有する非小細胞肺がん患者を対象に、共有結合性のKRASG12C阻害剤であるAdagrasib/MRTX849が2022年にFDA承認を取得している。Adagrasibについては抗EGFR抗体や抗PD-1抗体、SOS1, RAF/MEK阻害剤との併用療法の追加の臨床試験を進めており、他の品目としてKRAS G12D阻害剤のMRTX1133、マルチキナーゼ阻害剤のSitravatinibや、MTAP欠失がんの合成致死標的としてPRMT5阻害剤のMRTX1719の品目などを開発している。Bristol Myers Squibb社に買収され傘下に入っている。